手製本をはじめたきっかけ

家族と一年商店さんと、
大坪メイさんと一緒につくった「一年カレンダー」

早速反響をいただいて、先日イベントのあった藤野まるまるマルシェでも、「日記、買ったんです!」と嬉しそうに教えてくれるかたが何人かいらっしゃいました。

素敵な取組みに関わらせてもらっているなって、わたし自身も思っているので、みなさんの嬉しそうなお顔をみて、改めてわたしもより強く嬉しく実感できました。ありがとうございます!

一年カレンダー

家族と一年商店の中村暁野さんが、いくつか「一年カレンダー」について、コラムを書いてくださっています。

コラムで、わたしが手製本をはじめるきっかけになった出来事を紹介してくださったので、わたしもそのときの出来事をすこしかいてみようかな、と思います。

(というのも聞かれることは多いのですが、その度泣きそうになってしまうので(弱っちくてスミマセン)、初対面の人にご迷惑をおかけする可能性を減らすためにも・・!)

きっかけは子供を授かり、その子を流産してしまったことでした。

いわゆる化学流産?というやつだったので、一緒にいられたのはモニターに映るか映らないかくらいの、ほんのほんの少しの間。それでもいつもの感覚ではない不思議な身体の感覚と、とてつもない強さの母性がムクムクと湧いていたので、「お腹の中に赤ちゃんがいるんだな」という感覚だけは強くつよくありました。

いなくなってしまった瞬間も、それまで強くあった母性の塊のようなものが、シュルシュルシュル・・と、とてもわかりやすくしぼんで消えてしまったので、お腹の中からいなくなってしまったことが、感覚的にもよくわかりました(病院でもそんな診断でした)

お腹のなかからいなくなってしまった事実に、何をしていても悲しくて涙があふれてどうしようもなかった矢先に、お世話になっている友人のお母様が亡くなり、ヨレヨレながらにもお通夜かお葬式どちらかにはどうしても出席しなきゃと、使命感のようなものを抱えながらお通夜にでかけたのを覚えています。

出席したお通夜は「お通夜」という悲しいお別れの場に、こんなことを言うのもどうかと思いますが、それはそれは素晴らしい会でした。何が素晴らしいかって、亡くなった故人がどんな人だったのか、これまでのあらゆる活動や趣味の俳句や短歌、詩など、つくったものたちがあちらこちらに並べられて。来られた方がそれぞれに手にとってみることができて。ご家族の故人への愛情と、いろんな人に亡くなった家族が残したものを見てほしいという想い、自分たちの家族は、こんな人だったんだってぬくもりごとしっかり伝わってきたから。

そこに並べられたものの中に、あった一冊の本。亡くなられたお母様の編集者時代にご自身が携わった「ベビーブック」という、3歳まで綴れる育児日記に近いもの。その本には自分が産んだ赤ちゃん(つまり友人)のことが小さな出来事や、そのときの社会情勢なんかも、ひとつひとつ書き記されていて、そのとき子供がいなくなってしまったばかりのわたしは、その本に釘付けになりました。その本がまたみたくて翌日の葬儀にもつい出席したほど・・(オイ)

そしてその時なんだかふと、いまは悲しくてどうしようもないけれど、ベビーブックのような本を自分でつくることができたら、わたしの感覚のなかでしか居たことがわからないいなくなってしまった子が、確かに存在していた証が残せるような気がして、いつかまた来てくれるかもしれない子も楽しく待てるんじゃないかと思ったら、何をしていてもどうしようもなく悲しかった心に、ほんの少しの希望が持てたんです。

自分でつくるならああしたい、こうしたい、がふわふわと膨らむなかでみつけたのが「手製本」との出会いでした。

一年カレンダー

過去のわたしの小さな一日が、今に繋がっているように、ひとりひとりの小さな一日は、こうしている今も、まだわからない大きな何かにつながっているんですね。

「一年ダイアリー」の制作に関わるなかで、あきのさんに過去をすくいとってもらったおかげで、これまであった色々を少し肯定できるような気持ちにもなりました。

生きているなかで気持ちにフタをしてしまったり、歪ませてしまったり、完璧な人間なんていないから、そんな日々だってみんなもちろんあって、きっと大切なのは暁野さんが伝えてくれるように、そんな自分をふくめて認めてあげたり、大切にすることから始まるんだろうなと、わたしも思います。

この日記を書きながら自分の気持ちと向き合う日々が、自分を大切にするきっかけになるなら、こんなに嬉しいことはありません。

一年カレンダー

「一年カレンダー」は家族と一年商店 中村暁野さんの入魂企画を、デザイナーの大坪メイさんが大切に毎日使いたくなるデザインに起こし、わたしが一冊ずつオーダーメイドで綴じる日記帳です。今回は毎月の動画配信と一年に3回のお茶会つきとなるそうですよ。

受付は11月20日までの数量限定販売となりますので、ぜひ家族と一年商店さんのwebサイトよりご覧ください。

2022/11/16